【改良版】財務指標による優良株・割安株の見分け方

資産運用

株式投資の基本は長期投資。つまり株式投資において利益が得られる銘柄とは、大ヒット商品の開発で一時的に爆上がりする銘柄ではなく、未来永劫必要とされる事業であって、かつ多少の不景気では揺らぐことの無いしっかりした経営基盤を持っている会社の銘柄、ということになります。

経営がしっかりしている会社の株を、なるべく割安な時期に買うことができれば、大きな利益を得られる可能性が高まります。

では、経営がしっかりしている会社、経済的に安定している会社というのはどうやって見分ければ良いのでしょうか。そして株価が割安かどうかはどうやって判断するのか。

以前別の記事で、企業の財務指標から割安株、優良株を見い出す方法についてご紹介しました。

今回は更に、より詳細に株価の割安性と優良企業を見分ける財務指標をいくつか紹介し、投資利益につなげる方法について検討します。

優良株とは何か?投資初心者が知っておくべき財務指標とは

優良な会社・優良な銘柄とはどういうことでしょうか。
それはつまり、借金が少ない、または借金を返せるだけの余裕のある資金を持っている会社、ということが1つ挙げられます。
どんなに調子が良い会社も、コロナショックやリーマンショックのような有事の際に売上が下がることはあるものです。景気が悪くなったり、一時的に資金繰りが悪くなったりして借金が返せないようでは、例え大ヒット商品が生まれる見込みがあったとしても潰れてしまいます。
経営がしっかりしており、財政が安定している企業は、新商品や新サービスを生み出すための投資にもお金をかけることができるので、将来性を見込むことができますよね。

そのため、優良株かどうかの指標として、経営の安定性を測る指標をチェックします。
ここでは、流動比率と有利子負債自己資本比率について紹介しますので参考になさってください。

割安性の目安となる指標は前回の記事でも紹介したのでそちらを参照頂ければと思いますが、今回は追加で1つ、「EV/EBITDA倍率」という指標もご紹介します。

【優良株基準】流動比率とは?

流動比率とは、流動資産(1年以内に現金化が可能な資産)と流動負債(1年以内に返済が必要な借金)のバランスを示したものです。
短期間で返済しなければならない借金と、その支払い能力を見るもので、

流動比率

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

で表されます。
借金を返すためには借金以上の資金が必要ですから、流動比率は少なくとも100%以上ないと、借金の返済が難しくなるということがわかると思います。

もちろん会社として資金が必要になるのは借金の返済だけではありませんので、流動比率は200%以上が理想だと言われていますが、実際は150%前後の企業が多く、業界によっても平均値は異なるようです。

【優良株基準】有利子負債自己資本比率とは?

有利子負債自己資本比率(有利子負債比率)とは、有利子負債の自己資本に対する比率を表したもので、企業の安定性を示したものです。自己資本とは、返済する必要のないお金(株主から調達した資金など)のこと。

有利子負債比率

有利子負債自己資本比率(%)=有利子負債÷自己資本×100

先ほどの流動比率とは借金の占める位置が分母分子逆です。
つまり、流動比率と逆で小さいほど良く100%を切っているべきであり、70~80%くらいが理想、ということになります。

【割安株基準】EV/EBITDA倍率とは?

EV/EBITDA倍率は、企業が他の企業を買収するM&Aのときに注視される指標です。
EV(負債や資産、株式すべて含めた企業価値)をEBITDA(企業の収益力)で割ることによって、「その企業を買収した場合、買収金額を何年で回収できるか」を示す値となります。

通常、8年が平均とされており、中小企業の場合は3~5年が理想とされています。

財務指標をスコア化して優良株・割安株を見分ける方法

各指標の意味と目安がわかったところで、上記の財務指標をどう評価するかが大切です。
以前の記事でも紹介した通り、私は各財務指標をスコア化し、総合的にスコアの高い銘柄に投資しています。

財務指標のスコア化の方法は別の記事でも説明していますが、今回も新たに仲間入りした指標も加えて簡単に説明します。

スコア化の仕組みとメリット

なぜ、各財務指標をスコア化する必要があるのか?
それは、株式投資における各銘柄の分析は様々な要因が絡み合っており、特定の指標だけを見て銘柄の良し悪しや割安性を見分けることが難しいからです。

例えば配当利回りの良い銘柄が良い銘柄かと言えば必ずしもそうとは限らず、利益や自己資本が少なく借金が多いのに無理して配当を出しているようでは、将来的に経営に無理が生じたり、配当を減らさざるを得ない状況に陥り株を手放す人が出てきます。
そうなれば株価も必然的に下がり損をすることになるので、配当利回りの良い銘柄に投資するならば、配当を出すために無理をしていない(配当性向や経営安定性、負債の割合)ことも含めてチェックすべきです。

業界によっては数値が平均と大きく異なる場合もあるので、1つや2つ平均から離れた数値があっただけで良い(または悪い)銘柄と早合点してしまうこともなく、優良銘柄の見落としや財政的に危険な銘柄を購入してしまうリスクを減らせることがスコア化の利点です。

名の知れていない企業の経営状態や営業利益について詳しい方は少ないでしょうし、有名企業だから経営状態が良いとも限りません。一定の評価基準があることによって、どんな企業でも良し悪しの判断がしやすくなります。

株式投資では、SNSなどで他者の情報や考えに流され失敗するケースはよくあります。
スコア表は必ずしもこの通りである必要はありませんが、人の意見に流されず自分の中で一定の基準を設けるためにも、こういった自分なりの評価基準、ルールは必要だと考えています。
私のスコア表は一例として参考にしてください。自分なりにアレンジしてもOKです。

投資マイルールを設定するメリット、他のみんなの投資マイルールの紹介はこちらの記事をご覧ください。

以下に、新指標も加えたスコア表を提示します。
スコアの付け方がわからない方は前回の記事をご覧ください。

銘柄配当利回り
<5%>
配当性向
<50%>
連続増配年数
<16年<
PBR
<1.1>
PER
<10>
自己資本率
<50%<
ROE
<10<
PCFR
>10>
有利子負債比率
>80>
流動比率
<200<
EV/EBITDA倍率
>8>
スコア
A462.576.66137.52020108104.66
B106.667.55105201085895.16
銘柄A:配当利回り2% 配当性向30% 連続増配年数4年 PBR 0.77 PER 15 自己資本率 65% ROE 7.5 PCFR 5
    有利子負債比率40% 流動比率200% EV/EBITDA倍率10
銘柄B:配当利回り5% 配当性向75% 連続増配年数12年 PBR 0.55 PER 10 自己資本率 25% ROE 20 PCFR 10
有利子負債比率100% 流動比率100% EV/EBITDA倍率10

このスコア表を基に、銘柄Aと銘柄Bの割安性や優良株かどうかの判定を見ていきましょう。

スコアの高い銘柄の例と分析

上記のスコア表を例にとって、スコア表による銘柄の分析をしてみましょう。
上のスコア表では、銘柄Aの方がスコアが高くなっています。
実は新しい指標3つ(有利子負債比率、流動比率、EV/EBITDA倍率)を加える前は銘柄Bの方がスコアは高かったのです。

以前のスコアは会社の資産や収益に対する評価はされていましたが、借金の大きさ、返済能力とのバランスについての評価がなされていなかったので、より企業の安定性についてしっかりと評価できるスコア表になったのではないかと思います。

銘柄Aの企業は配当利回りが低く、一見すると魅力的には感じられないものの、借金が少なく返済能力も高いので財政基盤がしっかりしており、長期保有に適した企業であると考えられます。
しかも、そこそこ割安な時期なので買い時と判断することができます。

スコアの低い銘柄の例と分析

では、スコアが低かった銘柄Bはというと、配当利回りが高く魅力的で、ROEが高いので稼ぐ力も高く、かつそこそこ割安な時期でもあるようですが、
借金は返済能力ギリギリで、「しっかり稼いでいるけれど、そのための設備投資は借金に頼っている」という印象を受けます。

全体的なスコアは悪くないので割安な時期に購入することができればそこそこ利益は出そうですが、長期保有するには企業の財政基盤が危なっかしくて、もう少し余裕がほしいな、と思うところです。

このような感じで、総合スコアとその中身を分析した上で投資する銘柄を決めています。

前回の記事で紹介した財務指標との関係性

今回新たに財務指標をスコア表に加えたことで、どのようなことが期待できるのか、前回までのスコア評価と何が異なるのでしょうか。

今回紹介した財務指標と前回までに紹介した財務指標による銘柄評価の違いについて詳しく解説します。

PER・PBR・ROE・PCFR・自己資本比率との比較

前回はPER・PBR・PCFRのような株価の割安性を示す指標、ROEのような株主が投資した額に対して企業にどれだけ稼ぐ力があるかを示す指標など、「今投資するとお得なのか」に注目した指標が多くありました。

一方で企業の安定性を示す指標は自己資本比率のみ。
強いて言うならば配当性向は“無理をして配当金を出していないか”を評価した数値でしたが、それも配当金を持続的に出すことができるか、即ち将来的に配当金が減って人気がなくなり、株価が下がるようなことがないかを検討したに過ぎません。

今回紹介した財務指標(有利子負債比率、流動比率、EV/EBITDA倍率)を加えると、負債も加味した会社の価値、財政状態を評価することができるので、より正確に優良株を見分けることができます。

財務指標を組み合わせて優良株・割安株を見つけるコツ

先ほどのスコア表をもとに、割安性・収益力・配当・財務の安定性をスコア化して評価し、スコアの高い銘柄に投資するようにしています。
スコアは総合スコアだけでなく、中身のバランスも見て分析するようにしましょう。

財務指標は業界によって平均値も異なるので、かけ離れた値が出ている場合は同業他社の数値も分析します。
例えば、銀行は自己資本率を低くキープしなければならないルールが何かあるようなので、必然的に自己資本率と有利子負債比率のスコアは低くなるようになっていますが、銀行にも優良と言われている銘柄はあるので、低いスコアが出てもそれだけで切り捨てるのは早計です。

そのためいくつもの指標を組み合わせて総合評価をすること、中身を分解して考えること、業界内平均との比較をすることで優良株を見落としなくスクリーニングすることが可能です。

財務指標だけでなく、業績や市場動向も考慮することの重要性

企業はサービスや商品を売って儲けてこそ意味がありますから、財務指標が安定していて資産は十分に持っていたとしても、営業による儲けが出ていなければ存続が危ぶまれます。
株価や業績は日本経済、場合によっては世界経済の影響を受けますので、コロナショックやリーマンショックのような大きな経済不安や長引く不景気などがあれば、市場の影響を受けて企業の株価も左右されることになります。

今はそれなりに借金も少なくて資産も十分にあったとしても、業績不振や不景気が続けば株価や配当は下がり、いずれ資産の減少や負債の増加の経過を辿ることになりかねません。
現時点で少々の不景気や業績悪化に耐えられるだけの安定した基盤を持っている企業だとしても、事業内容とその結果を見て将来性の見込みも含めて検討することは忘れないようにしましょう。

財務指標から優良株を見極めて投資利益を享受しよう!

各財務指標の意味と、各指標をスコア化して優良株をスクリーニングする方法を紹介しました。

今回は前回紹介した内容から更に、負債の大きさと返済能力のバランスを評価に加え、より企業の安定性についてしっかり評価できるようにスコア表を改良しました。
スコア化することで、どんな企業でも一律の評価基準で経営状態の中身を知ることができます。
他人の意見に流されて失敗するケースは非常に多いので、自分の考え、基準に基づいてマイルールを作ってブレないようにしましょう。

総合スコアが低かったり、非常に高かったりしても、それだけを鵜呑みにせず、中身の分析や業界比較なども行うようにすると、よりしっかりと評価した上で優良株のスクリーニングをすることができます。

ぜひ、財務指標に基づいたルールを築き、投資利益をしっかり享受していきましょう!

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