今回は、私が株式投資において経験した体験談をお話しします。
私は2023年8月の頭くらいに、何となしに目に入った「東京日産コンピュータシステム」という会社の株を購入しました。
いつものように経営状態を数値で確認し、「借金がほとんどない経営で、良さそう」と考えての購入したのですが、これが後に、思わぬ理由で34万円もの利益を生んだのです。
その大きな利益を得た理由がTOB(株式公開買付)と呼ばれる要因です。
今回はそのTOBによって利益が得られた理由、TOBによる株主への影響や保有している株がTOBの対象になったときに株主がとるべき行動について解説しつつ、実際に私がとった行動をお話しします。
なお、他者からの買収ではなく、自社による自己株式の取得(自社株買い)によっても株価が大きな影響を受けることがあります。自社株買いについて詳しく知りたい方は以下の記事へどうぞ。
はじめに:TOBとは何か?
そもそもTOBとは何でしょうか。
投資を始めたばかりの方には耳慣れない言葉かもしれません。
TOB(株主公開買付)とは、主に企業どうしのM&A、つまり買収の際に使われる方法です。
例えば、A社がB社の経営を思い通りにしたい、完全子会社にしたい、と思ったときは、B社の全発行株数のうち、一定数以上を得ることでB社の経営に関して介入したり、全部買い占めれば子会社にすることが可能になります。
A社がB社を傘下に入れる、または子会社にするために、条件を満たす株を獲得するためには、
上記のような手法がとられるのです。
公開買付の対象になった株は、通常A社が+50%前後のプレミアム価格で買い取ってくれるので、市場価格も多くの場合はTOB価格付近まで上昇します。
しかし、TOBにも大きく分けて2種類のパターンがあり、「敵対的TOB」と呼ばれるパターンの場合はA社に対する嫌悪感からB社の株価が大きく下がる場合もあるようです。
私が体験したのは友好的なTOBのほう。
買収される東京日産コンピュータシステム側が株主向けの適時開示に
「当社はキャノンマーケティングによる公開買付に賛同し、株主の皆様にはこれに応募することを推奨することにしました」
という趣旨の声明を発表していました。
ここからは、私が体験した友好的なTOBの流れについて紹介しますね。
私が保有していた株がTOBの対象になったときの話
自分の保有している株がTOBの対象になったら、どのような行動をとるべきなのでしょうか。
私の体験した東京日産コンピュータシステム株のTOBに沿ってお話します。
保有株の概要とTOBの内容
まずはTOB発表当時、私が保有していた株の状況と、公開されたTOBの内容・条件を紹介します。
TOBが成立した後、東京日産コンピュータシステムはキャノンマーケティングの完全子会社となり、株は上場廃止されるようです。
株主優待も配当もなくなるので、株主的には保有し続けてもメリットはないということ。
TOBさえ成立すれば、個人株主が保有している理由はないので強制的に公開買付に応じなかった株も買い取られることになっているようですが、公開買付・強制取得絡みの手続きが色々と面倒なのでそれはこの記事の後半で説明しますね。
880円で買った株を1748円で買ってくれるということは、34万7200円の利益が見込めるということ・・・にわかには信じがたい金額でした(笑)
TOBの対象になったときの感想と行動
TOBの対象になったことを、私は最初知りませんでした(笑)
というよりTOBというのが何か知らなかったのです。
東京日産コンピュータシステムの決算発表の日のこと、私は決算発表により株価の変動があるはずだと思い、株価をチェックしていました。
すると、株価が913円まで上がっていたのです!
しかし、決算報告の内容を見ると業績は悪くはなかったものの、急上昇するほどとも思えず。
よくよく見れば株主優待と配当金の廃止まで発表されています。
下がるほどではなくとも上がる要因がまったく見えず、彼氏くんに話したところ首をかしげていた彼がしばらくすると、
彼「TOBじゃん!」
私「てぃーおー・・・びー?って何だ( ゚Д゚)?」
ここで私はやっとTOBというものが発表されていたことに気づき、TOBについて調べ始めます。
友好的なTOBならば基本的には株価が上がること(確実に1748円で買ってもらえる保証があるから)、TOBには成立しないケースがあること(買付の最低目標数に達しない場合)、TOB後に上場廃止になるケースとならないケースで事情が異なること、など。
公開買付に応募する方法を調べてみたら、思っていたよりかなり手続きが面倒くさかったのです。
東京日産コンピュータシステムの場合は上場廃止が決まっていたので、最終的に私の保有している400株はキャノンマーケティングが1748円で買い取ってくれます。
しかし、市場で売っても1740円以上まで上がるとわかっている株を、9月まで持っている必要はあるでしょうか?その他、調べてみると色々と面倒な手続きが発生することがわかったので、私は結局、東京日産コンピュータシステムの株を市場で売却することにしました。
TOBで得た利益とその使い道
東京日産コンピュータシステムの株価は2、3度ストップ高(株主が大きな損をしないための1日の値幅制限)を経た後、1週間足らずで1745円まで上昇しました。
私が東京日産コンピュータシステムの株を購入したのが880円のとき。400株で約34万円の利益を得ることができたのです。
TOBで得た34万をどうしたかというと、更に投資に回すことにしました。贅沢をするのは、もっとたくさん稼ぐまでお預けです(笑)
TOBの対象になった株を持っている人がすべきこと
体験談の中にも出てきましたが、TOBの対象になった株を保有していた場合、株主がとる必要がある行動は次の3つのパターンがあります。
私が市場で売却する手段を選んだ理由にも繋がるのが、このTOB決定後の手続き。
公開買付は手続きが煩雑で、強制取得は換金できるまでに時間がかかるため、ちょっと値は下がっても市場で売ってしまった方が良いと考えたのです。
どのケースが良いかは人それぞれだと思うので、ここからはTOBが発表された後、株主に与えられる選択肢を選ぶためのヒントをお伝えします!
公開買付に応募するメリットとデメリット
(友好的)TOBが発表された場合、企業からは公開買付への応募を勧められます。
TOBに応募することはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
通常の株式市場では、株がいくらで売れるかはわかりません。
しかし、TOBの場合は企業がわざわざ「プレミア価格で買い取りますよ!」と公言してくれているのですから、この値段で買い取ってもらえることは確実です。
ただし、TOBには「最低○○○〇〇〇〇株は以上集まらなければ不成立とします」と言った条件がつきます。公開買付を宣言した企業は一定割合以上の株を集めて経営への影響力を高めたい(または完全に傘下に入れたい)と考えているわけなので、目標割合に達しなければ意味がないのですね。
そして株主にとっては何より面倒なのは公開買付に応募する方法。
公開買付は特定の証券会社を指定して買付の手続きを代行してもらいます。
そのため、指定の証券会社に口座を開設し、保有している株を移管しないと応募できません。
そのため、新たに証券口座を開設して(しかも、移管元の証券口座が特定口座なら移管先も特定口座でなければならない)、移管手数料がかかるかもしれない移管手続きをして、成立するかわからないTOBを待つことになります。
うーん・・・手続きに労力かけるくらいなら、ちょっとくらい買取価格下がってもいいかなぁ・・・
市場で売却するメリットとデメリット
移管手続き、面倒くさい!と思った方が考える方法としては、株式市場で売ってしまうか、放っておく、という手段があります。
では、TOB対象になった株を市場で売却するメリットやデメリットは何でしょうか?
TOBが発表された株の多くは株価が急上昇します。
1000円だった株が急上昇して1990円になったとしても、確実に2000円で買い取ってくれる人がいるとなれば、買いたい人はたくさんいるのです。
しかし、TOB対象株を持っている側からすれば、2000円で買い取ってもらえることがわかっている株を1990円で売るとなれば惜しいような気もしてしまいますよね。
更に売却手数料までかかるのなら、もったいないと思ってしまいます。
とはいえ、1か月以上先の公開買付に応募するために口座開設と移管手続きの労力をかけたところで、公開買付と市場価格の差が数円に迫っていたら公開買付との差額は数千円です。
ならば早く売却してその利益で別の株を買った方が更なる利益を生む可能性がある。
そう考えたため、私は市場で1748円の公開買付価格に対しマイナス10円以内を目標として売却を決めました。
しかし、売却を決める直前まで迷っていたのは強制取得により公開買付価格で引き取ってもらうこと。
株式が強制取得されるのを待つメリットとデメリットはどこにあるのでしょうか。
強制取得まで保持するメリットとデメリット
TOB後に公開買付を行った企業が全株買い取り、上場廃止にする条件の場合、企業はTOBが成立した後は株主の意思によらず強制取得という手段をとることができます。
強制取得を待ちTOB対象株を保有し続けるメリット・デメリットとは?
私の場合、公開買付期間は8/9~9/25までと1か月以上の期間がありました。
調べたところ、9/25にTOBが成立したとして、その時点で株を保有したままの人は強制取得の手続きをとり、最終的に相当額の代金が振り込まれるまでが数か月かかるとのこと。
代金は振込になるため、所得として確定申告しなければなりません。
確定申告しなくて済むように特定口座を開設していても、対象外の所得が生まれてしまっては意味がない・・・。
TOBには買付数に上限や下限が設けられているので、そもそもTOBが成立せず、値下がりする可能性も考えられます。逆に、TOBが成立すれば数か月後にはTOB価格と同等の金額が振り込まれることがわかっていたら・・・それでも市場で少し安い値段で売るべきでしょうか?
利益が得られるまでに数か月もかかるのなら、多少売値が下がっても売却益でまた別の株を買えば数か月で数万稼ぐことも十分可能。
と考えると公開買付に応募するしないに関わらず、TOB成立を待っている理由はなかったのです。
もちろん、市場価格がTOB価格付近まで上がらず得られる利益に大きな差がある場合は、公開買付への応募や強制取得を考えてみるのも大ありです。
おわりに:TOBはチャンスでもありリスクでもある
保有株がTOBの対象になり、私は34万円もの利益を得ることができました。
しかし、今回の大きな利益は【キャノンマーケティングによる全株買付】【友好的TOB】【TOB成立後の上場廃止】という条件がそろった上で得られたもの。
逆にこれが敵対的TOBならその時点で大損していた可能性もありますし、公開買付期間が終わるのを待っていたらTOB成立せず、結局株価が元に戻ったなんて可能性もありました。
投資で利益を得るには売買金額も大事だけれど【時間】も重要なポイントです。
長い目で見たら大きな利益がある、と断言できる状況ならば長期ホールドが投資の鉄則ですが、既に利益の見込みが立ってしまっているのならなるべく早く利益確定し、次の株を購入した方が、可能性が広がります。
TOBの対象になる株は見分けることができません。
私もたまたま目をつけて買った株がTOBの対象になっただけ。
保有していた株が運よく友好的TOBで価格が高騰する可能性もあれば、運悪く敵対的TOBにあたり株価が下落する可能性もある。
もし保有している株がTOBの対象になったとき、できるだけ素早い判断ができるよう、この記事が参考になれば幸いです。
この3か月後、私は更に別の銘柄でもTOBに当たり、45万円もの利益を得ることになります。
それを基に、TOBされやすい銘柄の特徴はある程度予測可能なのではないか?と考え、両者の特徴をまとめ、記事にしました。
TOBを予測できれば大きな利益につながる可能性になりますので、良かったら参考にしてください。
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